安南のへそ

発展著しいベトナム中部の町、ダナン暮らしを経てすっかりベトナムマニアになってしまいました。ディープに書き綴ってまいります。

佐藤初女『いのちの森の台所』

佐藤初女さんのことは、実はかなり前から知っていた。中学の頃学校で見た地球交響曲に出演されていた。もちろんその頃の自分はあまりに幼く、彼女の偉大さを知ることはなかった。けれど記憶の糸にどこかで引っかかっていたのか、大人になってから読んだ雑誌で彼女が紹介されているのを読んだとき、中学の頃5月だというのにひんやりとする体育館の暗闇で見た映画を思い出した。

 

それからさらに10年以上の歳月を経て、初めて佐藤初女さんの著書を読むに至った。なんと長い道のりだろう。しかもこれはアジアのとある場所に会った古本屋でたまたま見つけたものなのである。偶然というべきか、必然というべきか。

 

いのちの森の台所

いのちの森の台所

 

 

ご存じない方のために、簡単に説明を加えておく。

佐藤初女さんは青森で自宅に訪れた苦しみを抱えた人たちや、自殺を考えているくらい追い詰められてしまった人たちに手作りの食事でもてなすことで、癒しを与えてきた。92年からは岩木山麓には森のイスキアという施設を設立し、そこで活動をされてきたが、最近他界された。人の注目を浴びにくいことだけれど、何十年もひたすら心のこもった食事を作り、人を癒してきたというのはそう簡単にできることではない。だからこそ人を呼び、人から称賛されるに至ったのだと思う。長く信仰するキリスト教的な精神といってしまえばそれまでかもしれないけれど、初女さんのような方はきっと魂の純度が高いというか、自分がなすべきことがわかっていて、その通りに行動できる力を持った人なのだと思う。

 

以下、心に残った個所を引用する。

 

p19

ともに食すことは、ともに或ることです。どんなに言葉を尽くして話すよりも、深いところで通じ合えるんですね。食べものほどストレートに心を伝えるものはありません。

 

p52-53

いつまでも自分の中に悲しみを抱えていると、自分の健康にも影響しますしね。(…)その中に埋没するのではなく、そこから一歩出るようなこころの努力をしなければいけないように思います。

 

p56

悲しみから一歩立ち上がるためには、自分の努力が必要なんです。その努力というのは、人様に何かして、喜んでもらうこと。